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大阪地方裁判所 昭和55年(ワ)7611号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一本件事故の発生

昭和五四年一二月二八日午前一〇時三〇分ころ、大阪市住之江区泉二丁目一―六所在の栗本鉄工株式会社加賀屋工場内で被告会社従業員数名がレッカー車、フォークリフト車を用いて原告主張の鋳鉄管の運搬作業を行つていたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告は運送業を業とする訴外田中自動車有限会社の従業員(運転手)であるが、田中自動車は栗本鉄工株式会社の専属として、加賀屋工場、住吉工場、泉北工場から同社製造の鋳鉄管の運送を引受けており、原告は田中自動車所有の3.5トンのトラックに助手なしで乗車し右運搬を担当していたこと、他方、被告会社は栗本鉄工株式会社加賀屋工場内で鋳鉄管の引取、保管、塗装、出荷、荷造、運搬等を請負つており、右出荷作業については鋳鉄管を積置場からレッカー車又はフォークリフト車で運搬しトラックに積み込む作業であつたこと、本件事故当日、原告は前記工場の出荷門前現場で栗本鉄工の担当者の高木正昭に名古屋方面へ運送する鋳鉄管の伝票を渡したところ、「今日は年末で忙しいからレッカー車はないのでフォークリフトでやつてくれ」と指示され、当日の積込予定の口径三〇〇ミリの鋳鉄管四本をトラック荷台に積込む作業にとりかかつたところ、被告会社の年令二七・八才の氏名不詳の従業員がフォークリフト車(約一〇トン)を運転して右四本の鋳鉄管を運搬してきてトラックの荷台の右側に横付けしたこと、ところが、右フォークリフト車上の四本の鋳鉄管のフランジ(継ぎ手)の位置がいずれも同一方向にあつたので、右運転手はトラック右側後方に待機している原告に対し「フランジが同一方向を向いているがよいか」と確認したのに対し、原告は「それでよいが、とりあえず一本だけ降ろしてくれ」と答え、右運転手は軽く手を上げてこれに応じたこと、原告はフォークリフト上からうち一本の鋳鉄管のフランジを持つて荷台の上に転がり落とし、さらにこれを荷台の左端の側板まで転がし右手をフランジにかけたままで左手で側板との間に歯止めを入れたこと、すると右運転手は突然残つた三本の鋳鉄管を一度にガラガラと荷台上に転がしたため、原告は歯止めをしていた最初の一本の鋳鉄管と転がり落ちた鋳鉄管の間に右手指をはさまれ、右示指、中指挫滅傷の傷害を受けたこと、そこで原告は直ちに栗本鉄工株式会社内の医務室で応急手当を受けたが、他方、フォークリフト車の運転手は事故現場から「よいか行くそ」といつたままフォークリフト車を運転して現場を離れたが、その後、右医務室に来て原告に対し「すみませんでした」と謝つたことがそれぞれ認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。もつとも<証拠>によれば、同人は栗本鉄工株式会社加賀屋工場の出荷門前における鋳鉄管積込の現場担当者であり、本件積込みの際もこれに五メートル以内の位置に立合つていた者であるが、原告は前記積込み後、自らトラックの側板を上げて金具を締めており、声を発することもなく変つた様子もなかつたし、原告はそもそも右積込みの際に鋳鉄管にふれていなかつた旨供述するが、同人の見分した位置が五メートル以内といつても、原告の動静を明確に確認できる位置であつたかは明らかではなく、原告は受傷直後に医務室にかけこんでいること、そして右傷害の態様、程度は相当に大きな力が加つて生じた重傷であつて、他に右傷害の原因となるべき事故状況が証拠上認められないことなどを考察すれば、右供述はにわかに措信し難いものといわざるを得ない。

二被告会社の責任

1 <証拠>によれば、本件フォークリフト車は道路運送車輛法上の大型特殊自動車であつて、自賠法三条の「自動車」に該当すること、本件フォークリフト車は被告会社の所有であつて、被告会社は自己のために前記工場内においてその従業員をしてこれを鋳鉄管運搬のため運行の用に供していたことが認められ、他に右認定に反する証拠はない。

2  そこで、本件事故がフォークリフト車の「運行」によつて惹起されたか否かについてみるに、自賠法二条二項によれば、右「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいうと定義されているところ、右装置は必ずしも原動機に限られるものではなく(参照、最高判昭和四三年一〇月八日、民集二二巻一〇号二一二五頁)、走行装置のみならず当該自動車に固有の装置もこれに含まれ、これらの装置の全部又は一部をその目的に沿つて操作すれば、右「運行」に該るものと解するのが相当である。しかるところ<証拠>によれば、本件フォークリフト車の前部に二本のフォークが設置されておりこれは上昇下降及び前方後方に傾斜させる操作をすることができること、本件の場合、被告会社従業員は右フォーク上に四本の鋳鉄管を一列に並べて運搬してきて前記トラック荷台の右側に止まり、フォーク荷台の高さにまで水平に上げ、フォークの先端を荷台に近づけた後これをやや前方に傾斜させて右鋳鉄管を荷台上に転がり落した際に本件事故が発生したことが認められるから、右フォークの操作は前記「運行」に該当するものというべく、従つて原告は右フォークリフト車の運行によつて前記傷害を被つたものというべきである。

3  被告は、本件事故は原告の一方的過失に基因する旨主張するので判断するに、前掲1の各証拠によれば、原告としてはまず鋳鉄管一本について歯止めをした後、フォークリフト車の運転手にちよつとフォークを下げてくれと合図をして残りの三本を一本ずつ自分の手で転がして荷台上に積込み、最後の鋳鉄管と側板との間に歯止めをする予定であつたところ、右フォークリフトの運転手が合図を待たずに一度に三本を転がしたこと、原告は右当時、ヘルメット、安全靴、長袖シャツ、そして皮製の手袋を着用していたことが認められる。他方、成立に争いのない乙第二号証の栗本鉄工所加賀屋工場作成の鋳鉄管取扱安全基準によれば、鋳鉄管の積付については、フランジのある方とない方を交互に積むこと、フォークリフト車から積込む際、そのフォークと荷台を平行に保ち、人力で転がして積込むのが安全であることが指示されているが、証人今岡隆則、同川上功の各証言によれば、右安全基準で指示されている手で送り込む方法は二段積以上の場合であつて、本件の如き一段積の場合は右方法に限られず、特に管径が三〇〇ミリメートル程度のものの場合はフォークを前方に傾斜させることによつて自然に転がす方法もあることが認められる。しかし、本件においては、原告がフォークリフトの運転手に対してその積込方法を指示したのであるから、その方法の当否はともかく、右運転手としては最後まで原告の指示に従うべきであつて、原告の合図を待たないで鋳鉄管を転がり落したことは明らかに同人の過失というべきであり、同人に過失がなく原告の一方的な過失であるとは到底認め難い。よつて被告の前記主張は採用することができない。

4  右の次第で、被告は自賠法三条所定の運行供用者として原告が本件事故によつて被つた損害を賠償すべき責任がある。  (久末洋三)

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